平穏な村に、突如人喰いワニが現れた。

ワニは子供を人質に取り、その子の母親にこう言った。「おいお前!ガキを喰ってほしくないか?いいだろう。ならオレがいまからすることを当ててみろ。当てたらガキを返してやる。だが!外れたらお前の目の前でムシャムシャと喰ってやる!」 

こいつはてぇへんだ。もちろん母親はあわてふためき取り乱して動揺ののちパニックを起こしている、かと思いきやなぜかニンマリ。あまりのショックで気が狂ったか。いやいや、そうではない。というのも、母親はワニの言葉をしっかりと聞いていた。そしてワニにこう言い返す。

「アナタは子供を食べるでしょ」

へ?まさかのアンサー。やはりオカシくなってしまったのか。かわいそうに。ところが、ワニは子供を目の前にして硬直。その隙に子供は自力で逃げ出すことに成功した。なぜか?なぜワニは固まってしまったのか。

じつをいうと、母親の予想はハズレだった。となればワニは違うことを考えていたので子供を食べていいことになる。しかし!食べようものなら母親の予想はやっぱりアタリ。なのでワニは子供を食べてはいけない。でも食べないのなら母親の予想はハズレ。でも食べたら.. んー、まさにワニワニパニック。結局ワニは子供を食べることも食べないことさえもできなくなってしまったのだ。

矛盾という名の猛獣に喰われたワニくんだったのでした。